ヘルスケア・ライフイベント表の作成

私たちの人生は昔から「航海」や「旅」に例えられることも多いですが、海図やコンパスのない「航海」ほど危険なものはありません。人生にとって「海図」の役割をするのが「ライフイベント表」であり「キャシュフロー表」です。人生のイベント・目標をあらためて俯瞰することによって目標の達成に必要なこと、起こりそうなリスクへの対策も検討できます。

ヘルスケア編でも説明しましたが、私たちの寿命は医療技術の進歩によって延びていますが、生きていくためのコストは増えるのです。長生きリスクに対する不安を払拭するためにも「海図」と「コンパス」を手に入れましょう。

ヘルスケア・ライフイベント表を作成するには

本項では、ファイナンシャルプランニングの技法の一つである「ライフイベント表」「キャシュフロー表」を作成するプロセスを説明します。

ライフイベント表を作成するには、まず、ご自身のライフプランや人生の三大支出と言われる住宅・教育・老後の費用を具体化する必要があります。費用額や支出の時期について想定します。その上でご自身が

「自分はこうして生きたい」ということを叶えるための経済的条件を加味したファイナンシャルゴールを設定します。


■ ファイナンシャルゴール設定の必要性

ファイナンシャルゴールを設定する際には「5W2H」の視点で考えることによって、自分が人生において本当に実現したい目標は何なのか明確になります。

① Why (理由)なぜそれを実現したいのか?
② Who (主体)誰が実現したいのか?
③ When (期限)いつまでに実現したいのか?
④ Where (場所)どこで実現したいのか?
⑤ What (目的)何を実現したいのか?
⑥ How/How much (具体的数値)どのくらい時間やお金がかかるのか?

■「ライフイベント表」を作成する手順

エクセル表を用意してください。

①「年」の欄を作り、わかりやすいように暦年・元号などを記入します。

②「家族」の欄に家族構成を記入します。

③「年」に合わせて、家族の年齢(年度末現在)を記入します。

④「年」に合わせて、ライフイベントを記入します。

 ・人生のイベント:結婚・出産・転職・退職予定など

 ・大きな支出:住宅購入・子供の教育費・自動車の購入・旅行など

 ※医療費、生命保険・医療保険の掛け金等については「生涯医療費表」にて加味

  (この項目はヘルスケア・ファイナンシャルプランニング要素になります)

⑤イベントを実現するための必要な金額を調べて記入する。


■「キャッシュフロー表」を作成する手順

前項と同じくエクセル表を用意してください。

①「収入」欄を作成します。

・給与の場合、給与と賞与それぞれから税金・社会保険料を引いた金額(可処分所得)の合計を記入します。定期昇給が見込める場合は加味し、昇給が不明な場合は定額で記入します。

・自営業の人は、事業収入のうち生活費として使用可能な金額を記入します。

②「支出」欄を作成します。

・主な項目は、基本生活費(食費・光熱費・通信費・被服費などの基本的な家計支出)、住居費(家賃・住宅ローンなど)教育費、保険料(生命保険料・損害保険料)などを記入しま

・車の買い替えや海外旅行といった一時的な支出・交際費・娯楽費などはその他支出や一時的支出にまとめて記入します。

③年ごとに収入と支出の合計金額を記入します。

・年ごとに「年間収支(収入合計ー支出合計)」の金額を算出。「収入合計」より「支出合計」が多い場合はマイナスの金額をそのまま記入します。

④年ごとの「貯蓄残高」を以下の計算式で算出します。

 前年の貯蓄残高+その年の年間収支の金額

・年間収支がプラスな場合はそのまま貯蓄残高に組み入れますがマイナスば場合は貯蓄残高を取り崩すことになる


■ 生涯医療費表の作成

従来のファイナンシャルプランニング技法であれば、「ライフイベント表」「キャッシュフロー表」作成でライフプラン実現のための対策をたてていきますが、ヘルスケア・ファイナンシャルプランニングでは、加えてヘルスケア分野での「リスク」「コスト」を予測し、「リスク・コスト」低減策を検討していきます。

「医療費を予測する」言い換えれば「自分がかかる病気を予測する」になります。自分が何時(いつ)、どんな病気にかかるのかが予測出来るのであれば、素晴らしいことで世の中の人々の生活を一変させてしまうことになるでしょう。残念ながら現在の医療技術では実現出来ていませんが、人間の遺伝子(ヒトゲノム)情報解析による将来の病気の発症リスクの予測や昨今ではビッグデータを活用して従業員の発症リスクを予測する企業もあります。

生涯医療費表の作成については、「医療費」の持つ性格、発生(病変=医療費支払)は予測しづらいですが、いざ、発生(病変=医療費支払)するとがんのように治療方法の選択肢がある病変を除いては、病気を治療する、熱・痛みを除去するという緊急性からの治療を受けない、治療費を値切るといったことは現実的には無理で払うべきものとして対応される方が大半です。

病気にならなければ払わなくていい支出も年間・生涯を通して確認すると1回の治療にかかるお金は少額たっだとしても、国民の平均値をとったとしても生涯医療費は人生の3大支出に匹敵する金額になります。


生涯医療費について理解を深めましょう

生涯医療費とは、仮に年齢階級別1人当たりの国民医療費及び年齢階級別死亡率が当該年度から変化しないとした場合に、1人の人が生涯で必要となる平均医療費がどの程度かを推計したもの

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生涯医療費(2010年度)厚生労働省.pdf
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